ばらの騎士
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ばらの騎士
三幕の音楽による喜劇(1911年)
音楽:リヒャルト・シュトラウス
台本:フーゴー・フォン・ホフマンスタール
上演時間:約4時間40分(第1幕後と第2幕後に休憩あり)
言語:ドイツ語上演(ドイツ語・英語字幕付き)
推奨年齢:14歳以上
ウィーンの貴族社会に家族間の争いはつきもの。粗野なレルヒェナウ男爵オックスは、従姉である元帥夫人とその若き恋人オクタヴィアンの朝の密会を遮って、自身の結婚準備を手伝ってほしいと頼みにやってくる。その結婚は愛よりも財産目当てのもの。オックスは、婚約の証として薔薇を届ける役を任されたオクタヴィアンが、やがて花嫁に恋してしまうとは思いもしない。
古代神話を題材にした一幕物の衝撃作『サロメ』や『エレクトラ』の後、リヒャルト・シュトラウスは、モーツァルトのオペラ・ブッファの伝統を意識した、より軽妙で明るい素材に取り組んだ。この方向転換はフーゴー・フォン・ホフマンスタールに歓迎され、彼の台本は、架空でありながら説得力のある風習や方言に彩られた、ロココ調の人工的なウィーンを創り出した。シュトラウスはそこに時代錯誤のワルツを織り込み、洗練された音楽で仕上げた。この幻想的なウィーンは、喜びと機知、そして階級意識に満ちていながら、同時に陰鬱さや退廃の気配も漂わせており、18世紀だけでなく、終わりゆくベル・エポックの姿をも映し出している。シュトラウスのスコアは、豊かな管弦楽の響きを惜しみなく展開し、比類なき終幕で絶頂に達するが、その中には深い亀裂も見えてくる。ハプスブルク帝国の崩壊を目前にして、『ばらの騎士』はひとつの時代への挽歌でもある。
あらすじ
第1幕
ウィーンにあるヴェルデンベルク侯爵夫人の寝室。
元帥夫人とオクタヴィアンがベッドで昨夜からの愛の余韻に浸っている。若いオクタヴィアンは情熱的に愛を語るが、夫人はふと物思いにとらわれている。黒人少年の召使が朝食を持ってくるので二人で食べ始める。部屋の外が騒がしくなり、ふたりは元帥が突然帰ってきたのかと狼狽し、オクタヴィアンは物陰に隠れる。しかし、夫人は続きの間から漏れ聞こえる声からそれが侯爵ではなく従兄のオックス男爵であることを知る。オクタヴィアンは小間使いの服を着て現れ、来客のどさくさに紛れて引き上げようとするが、ドアのところでオックスと鉢合わせする。好色なオックスは「彼女」が男性だとは気づかずに興味を示し、来訪の用件もそこそこに口説き始める。オクタヴィアンが逃れようとしてもそれを許さず、仕方なしに元帥夫人が「彼女」をマリアンデルという娘だとオックスに紹介し同席するよう命ずると、オックスはやっと用件を切り出す。
彼は最近貴族に列せられた富裕な商人ファニナルの一人娘と婚約したので、婚約申し込みの使者として「ばらの騎士」を務めてくれる貴族を紹介して欲しいという。元帥夫人は悪戯心を起こし、オクタヴィアンの絵姿を見せて“従弟”のロフラーノ伯爵ではどうかと尋ねる。オックスは同意するが、オクタヴィアンと目の前のマリアンデルが瓜二つであるのに驚き、曖昧にごまかす夫人の言葉から、ロフラーノ家の庶子だと思いこむ。そこへ侯爵家の執事や面会客が続々と入ってくるので、オクタヴィアンはようやく抜け出すことに成功する。
夫人の調髪師が彼女の髪を整える間、孤児の母親や帽子売りなど、来客が次々に用件を述べる。情報屋のヴァルツァッキとアンニーナがゴシップを売りこみに来るが夫人は取り合わない。しかたなく彼らはオックスに取り入り、男爵はあとで宿屋に来るよう言う。テノール歌手が夫人の前でオペラセリア風の空虚なアリアを歌っている間、オックスは侯爵家の公証人とともに結婚契約書を作り始めるが、欲深い彼は強引に多額の持参金を受け取る条項を付け加えようとして弁護士を怒鳴りつける。ちょうどそのとき、夫人が「髪型がおばあさんのようだ」と不満を述べ調髪師が慌てて手直しをしている。心が沈んだ夫人は教会に行く時間だからと皆を下がらせる。オックスはどうにか結婚契約書を作り上げ、元帥夫人に礼を述べると立ち去る。
元帥夫人は物思いにふけり、自分がいずれは年を取らねばならぬ思いを一人語る。彼女はそれが悲しいけれども受け入れなければならない現実であるという諦念を持つが、実感としてはまだあきらめきれない複雑な気持ちである。そこへ自分の服に着替えたオクタヴィアンが颯爽とやってくる。彼は元帥夫人が悲しそうな様子なので元気付けようとするが、心乱れた夫人からいずれ自分が夫人の元を去ることになるだろうといわれて憤慨し、いつまでも自分はあなたとともにあるのだと情熱的に語る。しかし、夫人が考えを改めないので不安になり、彼女を問い詰めるが、彼女は動じない。夫人は午後の再会を約束して彼を去らせる。彼を傷つけたことを悔いた夫人は、辞去するオクタヴィアンに別れのキスをしなかったことに気づいて召使に呼びにやらせる。しかし、オクタヴィアンはすでに馬で駆け去っていたという報告を聞き、ふたたび一人物思いに沈む。
第2幕
第1幕から数日後、ウィーン市内のファニナル家の客間。
「ばらの騎士」と婚約者オックスが初めて訪ねてくる当日の朝。婚約者となるゾフィー当人ばかりか、父親のファニナルも落ち着かずそわそわとしている。ゾフィーは落ち着くために神に祈っている。ばらの騎士の到着より先に婚約者を迎えに行かねばならないファニナルが出発すると、ほどなく外が騒がしくなり、ロフラーノ伯爵の到着を告げる。使者の行列に導かれて純白の衣装に身を包んだオクタヴィアンが登場する。
緊張した彼は銀のばらをゾフィーに手渡し、口上を述べると、ゾフィーもぎこちなく返礼を述べる(銀のばらの献呈の場面)。儀式が終わるとようやく打ち解けたゾフィーはいろいろと語り始める。それを見ていたオクタヴィアンは自分の心に沸き起こった不思議な感情を抑えられない。彼は一目見ただけでゾフィーに恋してしまったことを知る。緊張の解けた二人が語らいを続けていると、そこにオックス男爵が従者とともに登場する。しかしオックスの無作法な振る舞いにゾフィーは驚き、オクタヴィアンも脇で憤慨する。ファニナルがオックスを別室に案内すると他の人も一緒に付き従うが、ゾフィーとオクタヴィアンは残る。レルヒェナウ家の従者が酒に酔ってファニナル家の女中たちを追い回す騒ぎが起こり、ファニナル家の家来が皆その場を去る。二人きりになったため、ゾフィーはオクタヴィアンに助けを求め、彼は応じて二人のために守ると宣言するのでゾフィーは感激し、二人は抱き合う。
そこへ第1幕でオックス男爵の手下となったヴァルツァッキとアンニーナが現れ、二人を引き離し大声を出してオックス男爵を呼ぶ。オックスが登場すると、彼と口をきくのも嫌なゾフィーに代わってオクタヴィアンがゾフィーの気持ちを伝えようとするが、オックスは彼を小馬鹿にして取り合わない。ついにゾフィーがオックスとは結婚しないと宣言するが、オックスは無視して彼女を連れだそうとするので、オクタヴィアンは剣に手を掛ける。オックスは家来を呼ぶが、剣を抜いたオクタヴィアンに彼らはだらしなく引き下がる。引っ込みがつかなくなったオックスは剣を抜いて応戦するが、あっさり肘を突かれて悲鳴を上げる。オクタヴィアンを遠巻きにして言葉だけは威勢の良いレルヒェナウ家の召使が騒いでいるところにファニナルが登場し、起こったことに仰天する。医者がオックスの治療にとりかかる。オクタヴィアンが騒ぎを詫びて退場し、ゾフィーは父親に男爵との結婚を取りやめるよう懇願するがファニナルは聞き入れず彼女を叱責する。彼はゾフィーを去らせると、手当ての終わったオックスに詫びて酒を振舞う。
落ち着きを取り戻した男爵は酔った勢いで鼻歌交じりである。そこにアンニーナが登場し、オックス宛ての手紙を持ってくる。男爵がそれを読ませると、それはマリアンデルから会いたいという手紙である。当然オクタヴィアンの計略だが、そうとは知らない男爵はすっかり有頂天になりワルツに乗せて歌う。謝礼を求めるアンニーナを無視するので失望した彼女は怒ってその場を去る。そんなことは全く気にせず一人「私がいなけりゃ毎日さびしい。私がいれば夜も短い」と歌いつつオックス男爵が退場するところで幕が降りる。
第3幕
第2幕と同日夕刻のウィーンの居酒屋の部屋。
幕が上がると怪しげな居酒屋の一室で食事の準備が行われている。オックスを計略にかけるべく店員に準備をさせているのはケチなオックスに見切りをつけてオクタヴィアン側に寝返ったヴァルツァッキとアンニーナである。食事の支度だけではなく、オックスを驚かせる仕掛けも準備されている。やがて、マリアンデルに扮したオクタヴィアンが登場する。手はずが整ったことに満足して二人に財布を渡し、その場を去る(この間、オーケストラ演奏だけによるパントマイムで進行する)。
ほどなくオックス男爵とマリアンデルが登場する。オックスは店主たちを去らせ、マリアンデルを口説き始めるが、彼女は純朴な田舎娘の芝居をしつつはぐらかす。やがて、先ほどの仕掛けが働き始め、オックスは驚き混乱、マリアンデルも驚いて見せる。そこへヴェールで顔を隠したアンニーナが登場。オックスを自分の夫だと告げ大勢の子供が「パパ、パパ」と叫んでオックスにまとわり付くので、オックスは怒って大声で通りの警察官を呼ぶ。警察官の質問に対しオックスは自分の身分を告げ、マリアンデルをファニナルの娘で自分の婚約者だと紹介する。そこへオクタヴィアンがオックスの名で呼んだファニナルが登場する。彼は警察官にマリアンデルのことを問われ、驚愕して自分の娘であることを否認する。騒ぎを聞きつけて集まった野次馬が「これはスキャンダルだ!」と大騒ぎしているところに、突如元帥夫人が到着する。
彼女がやってくることはオクタヴィアンの計画にはなかったので当惑するオクタヴィアン。さらにゾフィーまでもそこに現れ、状況をみて驚きあきれる。彼女は気分が悪くなった父親を連れて別室に去る。元帥夫人がオックスの身分を保証するので警官は去る。ゾフィーが戻って来て、現れた父の言葉として二度と自分の前に現れないようオックスに告げるのでオックスは憤慨する。元帥夫人はオクタヴィアンに扮装を解いて出てくるようにいう。オックスは驚き、ここでようやくオクタヴィアンとマリアンデルが同一人物であることを悟る。同時に、先日の朝マリアンデル、すなわちオクタヴィアンが元帥夫人の寝室にいた事情も察する。ゾフィーも三人のやりとりでオクタヴィアンと元帥夫人の関係に気付いて呆然とする。オックスは、この秘密を盾にファニナルへのとりなしを頼むが、元帥夫人はオックスに「すべては終わった」とはねつけ、退場を命ずる。初めは納得せず渋ったオックスも負けを認め、その場を去ろうとする。そこへ宿屋の主人が勘定書きをつきつけ、アンニーナにつれられた子供たちが再び登場してオックスを追いかけるので、彼は従者をつれてそこを逃げ出す。宿屋の主人やアンニーナたちが彼を追いかけて全員去り、舞台には元帥夫人とオクタヴィアン、それにゾフィーの三人だけが残る。
元帥夫人は先日予期したときが思いのほか早くやってきたことを悲しみつつ、若い二人を祝福する気持ちでオクタヴィアンをゾフィーの元に行かせる。自分の気持ちにまだ戸惑いながらも、元帥夫人に感謝してオクタヴィアンがゾフィーに近づき、当惑する彼女に思いを告げる。ゾフィーがまだ事態を受け入れかねているので、元帥夫人は彼女にやさしくオクタヴィアンとともに家に帰るよう諭す。最初はぎこちなく拒否していたゾフィーも、オクタヴィアンの求愛を受け入れる。複雑な心境を三人それぞれが歌う(終幕の三重唱)。元帥夫人はそっと去る。それには気付かず二人が抱き合って夢ではないかと語り合う。元帥夫人がファニナルを伴って再登場し、ファニナルは納得して夫人とともに去る。幸福感に満たされた若い二人は今ひとたび短い二重唱を歌って退場する。二人が去ったあと軽妙な音楽に乗って、元帥夫人の黒人小姓が現れ、ゾフィーの落としたハンカチを見つけて駆け去ると幕が下りる。
プログラムとキャスト
音楽監督:クリスティアン・ティーレマン
演出:アンドレ・ヘラー
舞台美術:クセニア・ハウスナー
衣装:アルトゥール・アルベッサー
照明:オラフ・フレーゼ
映像:ギュンター・ヤックレ、フィリップ・ヒラーズ
合唱指揮:ゲルハルト・ポリフカ
元帥夫人 ヴェルデンベルク公爵夫人:ユリア・クライター
オックス男爵:ペーター・ローズ
オクタヴィアン:パトリツィア・ノルツ
ファニナル氏:ローマン・トレケル
ゾフィー:ニコラ・ヒレブランド
マリアンネ・ライトメッツェリン:クララ・ナデシュディン
ヴァルザッキ:カール=ミヒャエル・エーブナー
アンニーナ:カタリーナ・カンマーラー
警部:フリードリヒ・ハーメル
元帥夫人付き執事:フロリアン・ホフマン
ファニナル家の執事:ファン・ジュンホ
公証人:カルレス・パション
宿屋の主人:シュテファン・リューゲマー
歌手:アンドレス・モレノ・ガルシア
帽子屋:ソニア・ヘラネン
ベルリン国立歌劇場合唱団、ベルリン国立歌劇場児童合唱団、ベルリン・シュターツカペレ
ベルリン国立歌劇場(ウンター・デン・リンデン)
Staatsoper Unter den Linden は、ベルリンで最も権威あるオペラハウスの一つで、豊かな歴史と重要な文化的影響を持っています。
歴史:
Staatsoper Unter den Linden は、1741年から1743年にかけて、建築家ゲオルク・ヴェンツェスラウス・フォン・ノーベルスドルフの指揮のもとに建設されました。プロイセン王フリードリヒ2世によって委託され、当初は「Königliche Oper」(王立オペラ)と呼ばれていました。オペラハウスは、第二次世界大戦の損傷後、いくつかの改修と再建を経て、1984年に大規模な改修の後に再オープンしました。
建設:
オリジナルのデザインはバロック様式で、エレガントなファサードと壮大な入り口が特徴です。1950年代と1980年代に再建され、外観はクラシックなままに保たれつつ、内装は現代化されました。ファサードには、6本のコリント式の柱と目立つ中央のペディメントが特徴です。
内装:
内装は、その豪華でクラシックなデザインで知られています。ホールはその音響と壮麗さで有名で、豪華なベルベットの座席と精巧な装飾があります。舞台と座席エリアは現代のパフォーマンス基準に合わせて更新されていますが、歴史的な美学は保たれています。
コンサートと公演:
Staatsoper Unter den Linden では、オペラ、オーケストラコンサート、バレエなど、さまざまな公演が行われています。ドイツの主要なオーケストラの一つである Staatskapelle Berlin の本拠地です。オペラハウスは、その高品質なプロダクションとベルリンの活気ある文化シーンでの役割で評価されています。
アクセス
シュターツオーパー・ウンター・デン・リンデンは、その優れた公共交通機関の接続により、完全にバリアフリーでアクセスできます。
住所: Unter den Linden 7; 10117 ベルリン
Sバーン
S+U Friedrichstraße (S1, S2, S5, S7, S25, S75)
地下鉄
Hausvogteiplatz (U2)
Museumsinsel (U5)
Stadtmitte (U2, U6)
Unter den Linden (U5, U6)
バス
Staatsoper (100, 245, 300)
Unter den Linden/Friedrichstraße (100, 147, 245, 300, N6)
駐車場
Q-PARK駐車場 Unter den Linden/Staatsoper
Bebelplatz, 10117 ベルリン
駐車場には、5つの電気自動車用充電ステーションがあります。詳細情報はこちらをご覧ください。
Bebelplatzの地下駐車場には、障害者用駐車スペースとオペラハウスへの直接アクセスがあります。17:30から23:30の間に駐車場に入ると、最大駐車料金は7ユーロです。この料金を利用するには、駐車券を支払い機に入れて、「劇場料金」というメッセージがディスプレイに表示されます。17:30前に駐車場に入ると、この料金は利用できず、ディスプレイにも表示されませんのでご注意ください。ヒント: イベント前に支払い機で劇場料金を支払えば、ショー後の不必要な待ち時間を避けることができます。