賭けをする三人の男たち。その賭けの対象となる二人の女性。ドン・アルフォンソは、彼女たちの貞節を試すために残酷なゲームを思いつく。フェランドとグリエルモは、フィオルディリージとドラベッラが決して自分たちを裏切らないと信じている。二人は戦争へ向かうふりをし、その後変装して戻り、見知らぬ男を装ってそれぞれの恋人を誘惑しようとする。もし成功すれば、彼らは賭けに負け、ドン・アルフォンソの勝利となる。これがモーツァルトの《Così fan tutte》の物語の出発点である。現代的なオペラの題材と言えるだろうか。
このオペラが今日までレパートリーとして生き続けているのは、何よりもモーツァルトの音楽によるものである。その音楽は登場人物たちの心の奥深くを見つめながらも、決して彼らを裁かない。軽い遊びとして始まったものが、やがて関係者全員の足元を崩してしまう残酷な実験へと変化していくとき、音楽は人物たちの感情を、その複雑さと矛盾を含めてあらわにする。それは、1790年の初演当時も現代も変わることなく、性別を超えて私たちが共有する愛の実存的深淵を描き出している。
ヴェネツィア・ビエンナーレで銀獅子賞を受賞し、最近ではルール・トリエンナーレで大きな成功を収めたベルギーの演出集団FC Bergmanは、視覚的に強烈なシュルレアリスムを特徴とする舞台言語を用いる。ベルリンでの初演出、そしてわずか三作目となるオペラ作品として、《Così fan tutte》を現代の若者たちが人生の問いへの答えを遊びながら探し求める物語として描く。愛とは何か。私たちは人生でどんな役割を演じているのか。誰が誰を操っているのか。現実は本当に幻想よりも確かなものなのか。
歴史的演奏実践の分野で最も注目される指揮者の一人、リッカルド・ミナーシが、初めてドイツ・オペラ・ベルリン管弦楽団と共演する。フィオルディリージ役のエルザ・ドライジヒを中心とした若いソリスト陣が、この多層的な恋愛ゲームの心理的側面を探求する。
あらすじ
第1幕
舞台は18世紀末のナポリ。青年士官フェルランドとグリエルモは、老哲学者ドン・アルフォンソの「女は必ず心変わりする」との主張に対して、「自分たちの恋人に限ってそんなことはない」と言い争う。ドン・アルフォンソは、自分の主張を証明するために2人と賭けを行なうことを提案し、2人はドン・アルフォンソの指示に従うことを約束する。
フィオルディリージとドラベッラの姉妹が登場、自分たちと恋人の愛を讃える歌を歌う。そこにドン・アルフォンソが現れ、フェルランドとグリエルモが国王の命令で戦場に行くことになったと伝える。フェルランドとグリエルモが現れ、別れを嘆き悲しむふりをする。港に船が着き、兵士たちが出発する。4人の恋人たちが別れを告げ愛を誓う間に、ドン・アルフォンソは「笑いが止まらない」と歌う。兵士たちが出発したあとで、残された三人は航海の無事を祈る。
フィオルディリージとドラベッラの家。女中のデスピーナが愚痴をこぼしながら働いている。姉妹が嘆きながら帰ってくる。ドラベッラは、絶望の歌をコミカルに歌う。デスピーナは、「男はほかにもいるでしょう」と「つまみ食い」を勧め、「男や兵士の貞節なんて」と歌う。
ドン・アルフォンソはデスピーナをまるめこみ、芝居に協力させる。ドン・アルフォンソは「アルバニア人」に変装したフェルランドとグリエルモをデスピーナに紹介する。フィオルディリージとドラベッラが現れ、2人の男を追い出そうとするが、ドン・アルフォンソは彼らは自分の古い友人たちだと偽る。変装した2人は姉妹に求愛するが、フィオルディリージは貞節を誓うアリアを歌う。グリエルモは求愛の歌を歌うが、姉妹は立ち去る。
2人の青年は賭けに勝ったと笑うが、ドン・アルフォンソは芝居を続けろと命じる。フェルランドは愛のアリアを歌い上げる。ドン・アルフォンソはデスピーナと姉妹を陥落させる計画を進める。
姉妹は庭で恋人を想う二重唱を歌う。そこへ変装したフェルランドとグリエルモが現れ、絶望のあまり毒を飲んだふりをする。姉妹は驚き、変装した2人に同情しかかる。医者に変装したデスピーナが現れ、「磁気療法」を2人にほどこす。デスピーナは、のた打ち回る2人を支えるように姉妹に命ずる。意識を取り戻した2人は姉妹にキスを迫り、混乱のうちに幕を閉じる。
第2幕
デスピーナはフィオルディリージとドラベッラに「気晴らし」することを勧め、「女の子は恋の手管を覚えなければなりません」と歌う。姉妹は互いに「どちらを選ぶ?」と尋ね、ドラベッラは「ブルネットの方」(グリエルモ)、フィオルディリージは「ブロンドの方」(フェルランド)と実際の逆の恋人を選んでしまう。
ドン・アルフォンソは姉妹を庭へ誘う。変装したフェルランドとグリエルモが木管の調べに乗って現れる。姉妹と2人の男が打ちとけないので、ドン・アルフォンソとデスピーナが四人をくっつけようとする。フェルランドとフィオルディリージは庭に散歩に出かける。残されたグリエルモがドラベッラを口説くと、ドラベッラは陥落してしまう。一方、フィオルディリージはフェルランドの求愛を拒絶し、揺れ動く心を長大なアリア(ロンド)に歌う。
フェルランドとグリエルモは互いの首尾を報告する。グリエルモはフィオルディリージの貞節を喜ぶが、フェルランドはドラベッラの心変わりにショックを受ける。グリエルモはフェルランドをなぐさめるために「女はたくさんの男と付き合うものだ」と歌う。フェルランドは裏切られたと嘆く。ドン・アルフォンソはさらに実験を続けると宣言する。
苦悩するフィオルディリージに向かって、ドラベッラは恋の楽しさを陽気に歌う。フィオルディリージは貞節を守るために恋人のいる戦場へ行こうと決意し軍服をまとう。しかし、そこに現れたフェルランドの激しい求愛のために、フィオルディリージもついに陥落する。
賭けに勝ったドン・アルフォンソは、互いに認め合いそれぞれの恋人と結婚するよう提案し、「女はみなこうしたもの」と歌う。
結婚式の祝宴の準備が進められる。フィオルディリージとフェルランド、ドラベッラとグリエルモのカップルが登場する。公証人に扮したデスピーナが現れ、2組のカップルは結婚の証書にサインする。そこに兵士たちの歌声が響き、婚約者たちが戻ってきたと知らされ、姉妹は呆然とする。変装を解いたフェルランドとグリエルモが現れる。2人の青年は結婚証書を見つけて激怒し、姉妹は平謝りする。そこですべてが種明かしされ、一同和解して幕となる。